2019.02.17

若手が辞める理由には2つのスイッチがあるという仮説とその対策について


私が勤める IT 企業では以前から毎年新卒メンバーをエンジニア職で採用しています。感覚的には離職率は高くないと思いますが、やはり入社から1〜3年前後で数名は辞めてしまいます。

エンジニアは比較的流動性が高いのでしょうし、各人の人生の選択ですから離職自体が悪いことだとは思いません。ただそうは言ってもやはり少し残念に感じるケースもあるので、若手が辞めてしまう理由にはどのようなパターンがあるのかを自分の体験も絡めて考えてみました。

記事の内容は IT 企業、特にいわゆる SIer を想定しています。他の業態や業種でも当てはまる箇所があるかもしれませんが、少なくとも私自身が SIer にいて考えたことを書いています。

また、賃金の問題、ハラスメントを含めた人間関係、ブラック的な長時間労働については考察していません。今いる会社では、若手メンバーでこれらの原因で辞めたというケースは(幸いなことに)少なくとも私は聞いたことがないためです。

仮説

結論から言うと、以下の2つのスイッチ(きっかけ)が押されたときに若手が離職してしまうのでは、と考えています。

  1. 現場でのモヤモヤ
  2. 現状は変わらないというメッセージ

この2つのスイッチには順序があって、1. → 2. の順番です。
ストーリーとしては「現場でモヤモヤが溜まる」→「我慢できなくなって上司などに訴える」→「現状が変わらない、または変わりそうな希望がもてない」という感じです。

以下でもう少し詳しく一つずつ説明します。

現場でのモヤモヤ

まず一つ目のスイッチは「現場でのモヤモヤ」です。

モヤモヤの内容は人それぞれだと思います。精神的・肉体的にキツいのかもしれませんし、今いる現場では成長を感じられない・飽きたというパターンもあるでしょう。

仕事をしていれば何年選手だろうと不安を抱えるはずなので、問題はモヤモヤを感じること自体ではありません。ここで扱いたい問題は、本人の中でそのモヤモヤを持て余すくらいになるまで上司や人事などに相談されないということです。

そのせいで、若さも相まってすでに頭や心が柔軟ではなくなっている段階で会話が始まってしまいます。上司からしたら「もっと早くアラートを上げてくれよ…!」と思うところかもしれませんが、それは一方的な願望でしかありません。若いメンバーにとっては能動的に上司を捕まえてポジティブではない話を切り出すのはなかなか現実的な選択肢ではないでしょう。

特に SIer ですと「客先常駐」という業務形態が広まっています。物理的に場所が離れてしまうと、そもそも誰が自分の部門のリーダーや部課長かもよく分からなくなりがちです。正直私も入社2〜3年目にお客様先に常駐している間はそうでした。

それでもモヤモヤが溜まって抱えきれなくなると、誰かに打ち明けるなどのアクションが発生します。ここが1つめのスイッチが押された状態です。ただこの頃には頭も心も割とクローズな状態になっているのではないかと思います。

現状は変わらないというメッセージ

2つめのスイッチは「現状は変わらないというメッセージ」です。

私は1つめのスイッチだけでは離職を決意する決定打ではないと考えています。なんだかんだ言ってアラートは上げてはいますし、まだ会社を辞めたいというはっきりとした意思がないことも多いと思います。いまの現場を離れたいくらいの考えなのではないでしょうか。

ただこのタイミングでのコミュニケーションで上司や人事がミスすると2つめのスイッチが押されて「はいさようなら」ということになってしまいます。

1つめのスイッチが押されてアラートが上がってきたときに、若手側の期待と違う回答や期待を読み取れていない的外れな回答、ロジックで言いくるめるような回答をする、またはそもそも回答をしないと、それは「我々はあなたのためには動きません、現状を変えるつもりはありません」というメッセージと受け取られます。端的にいうと「拒絶」ですね。

たとえば「この現場にはあまり学ぶところがない、もっと先進的な環境でコードが書きたい」と言っているのにその現場の管理手法を学ぶようアドバイス(「まだ学ぶところがあるじゃないか」)したり、社内で開発したいと言っているのに数日後に次の客先の面談アポが入っていたり、そういった噛み合わないコミュニケーションが上記のメッセージになり得ます。

若手からすると(下手なりに)アラートを上げたのにそれかよ…と感じられ、モヤモヤが失望や無関心に変わり、2つめのスイッチが押され、離職が決意されます。

私は決してアラートを上げてきた若手に迎合すべきと言っているのではありません。雑なコミュニケーションをとるな、丁寧に接してやれと言っています。

1つめのスイッチに挙げたように、私が知る限り最初のきっかけは賃金や人間関係とかではなく現場での事象がほぼすべてです。つまり結局若手が上げてくるアラートは突き詰めれば「今の現場を外してほしい」という話になるわけです。お客様あってのビジネスですし、SES であれば有期契約ですから「はいそうですか」とすぐその要求を飲むわけにはいきません。

ただ、お客様とのコミュニケーションと同じように、若手のアラートに対してもゼロイチである必要はないでしょう。まずはアラートの中身をきちんと聞いて受けとめてやって、「今の契約は◯月までだからそこまでは頑張ってほしい、その次は一緒に考えよう」とか、相手にとって建設的な姿勢が感じ取れるような丁寧なコミュニケーションを取りたいところです。

対策

上記のような事態に陥らないために、スイッチを押させないために有効だと考えて私が自部門のグループ(課の一個下)内で行なっているのが 1 on 1 です。

1 on 1

月に一回、各グループメンバーに対して30分〜1時間程度の面談を設けています。

最近の仕事や目標についてなど、基本的にメンバーからの話を聞く形で進めていますが、私の中での目的は「接点を増やしてアラートを上げやすい環境を作ること」です。

1つめのスイッチは抱え込むことにより押されると考えているので、まずモヤモヤが溜まりすぎないうちにガス抜きさせたいという意図です。モヤモヤの初期段階では話を聞いてやるだけで和らぐこともあるかもしれません。

コミュニケーションとしての 1 on 1 の利点は定期的であることでしょう。

誰かの「判断」が必要になるとコミュニケーションは起こりづらくなると思います。イレギュラーで「呼び出し」するのは部下・上司どちらにとっても居心地がよくないというか、気楽にはできないのではないでしょうか。恣意的な判断を挟まずに、何かがあってもなくても、とりあえず話す機会を決めてしまった方がお互い楽です。

定期的に話をしていくうちに、いつか何か困ったこと、不安なこと、または願望などが出てきたタイミングでそれら吸い上げられれば良いと考えて 1 on 1 を実践しはじめました。

まだ効果のほどは分からないですし、1 on 1 そのものの中身に関してもはっきりした形を作れてはいません。さらに肝心の常駐メンバーと会えてないという課題もあります。それでも少しずつ自分の身の周りでできることをやっていこうと思います。


以上、若手が辞める理由とその対策についての私なりの考察でした。
技術ネタではないですしどういう形かは分かりませんが、誰かの参考になれば幸いです。


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